理論経済学Iゼミ

教員名 前田  隆
研究テーマ 複数の経済主体間における意思決定と調整プロセスの問題について
E-mail takashim@kenroku.kanazawa-u.ac.jp

ゼミの紹介

「理論経済学とは何を研究する学問分野ですか?」とゼミの見学に来る学生に尋ねられ,返答に困ってしまうことがある。確かに,経済政策,国際経済学あるいは環境経済学などは,その名前から何を勉強する学間であるか大体の見当がつくが,理論経済学は名前からは学間の具体的内容・目的を判断することが困難である。そこで逆に学生に,「理論経済学とはどのような学間だと思いますか?」と尋ねてみることにしている。この問答が理論経済学を学ぷ(実際は,大学で勉強をする)第一歩だと考えられるからである。学生の多くは,さらには大学の先生の多くまでもが,数学を多用する学問であると答えるのではないだろうか。このとき,私が準備している答えのひとつは,「理論経済学では,数学も英語などの外国語と同様ひとつの言語と考えています。数学を使うことが理論経済学の目的ではなく,表現を豊かにするために数学を利用しているだけです。例えぱ,現実に入手可能なデータを用いて経済モデルを作成し,これを用いて分析をするときには,数学とコンピューターは必要です。理論経済学では,何を勉強するかはその人の目的によって異なります。」である。

理論経済学(あるいは理論経済学のゼミ)では,経済政策に関心があれぱ,理論経済学の考え方と分析方法に基づいて,経済政策の策定や実施に必要な考え方とその方法を学ぴ,国際経済学に関心があれば,理論経済学の考え方と分析方法に基づき,国際経済学における問題を解決するため考え方と方法を学ぶことになる。すなわち,理論経済学は,上に述べた経済政策や国際経済学など,多くの経済学を学ぷために必要な基本的(fundamental)な考え方とその分析の方法そして応用の仕方を学ぷ学間であると考えられる。この意昧では,理論経済学は、多くの応用経済学を含むものである。

理論経済学Iのゼミでは,取引,意思決定,組織,制度そして市場などのキーワードを中心として,我々を取り巻くさまざまな経済・社会間題に対して,経済学の立場からそれを理解し,その解決策を提案する考え方を学ぷことを基本においている(ただし,経済間題といっても,ここで対象とする問題は,例えば,ディズニー・シーの入場料はいくらに決定すべきであるか,どこにコンビニエンス・ストアーを出店すべきか、といつた個々の企業の意思決定問題から,地球環境問題や景気対策問題まで幅広い)。このためには,その問題の本質を正確に理解し,適切な分析の道具を用いることが重要である。そこで,3年次には基本的な文献の輪読を通して,経済分析を行うために必要な知識の習得を行い(理論),4年次には,各自が興味を持った問題に対して,経済理論を用いた分析と政策の提言を行う〈実証)。特にこのプロセスは,(1)経済モデルの作成,(2)その実証・検証そして(3)攻策の提言という形をとって行われる。これは,ゼミの集大成である。少しだけ満足感が味わえるかもしれないし,味わえないかもしれない。結果(未来)は,誰にも分からない。神のみぞ知る,です。そんなゼミです。

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